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九州びいき

私は大学卒業後、すぐにフリーランスのライターになった。拠点は福岡。誰もが「東京に出た方がいい」と助言した。しかし、それから14年。生まれ育った福岡から離れていたら、今以上の自分はなかったと断言しよう。きっとこの本を執筆することもなかっただろうし、あったとしても、仕上がりはずいぶん粗末な出来になっていたように思う。

この間、私は福岡に暮らし続け、取材で九州各地を駆け巡ってきた。普通、ライターはジャンルを限定して書くものだが、地方ライターの専売特許で、あらゆるジャンルに携わらせてもらっている。おかげで、福岡に拠点を置くことによる不便さや惨めさは、一度も感じなかった。むしろ、ここにいるからこその経験を、たくさんさせて貰った。また、多くの出版社や新聞社が、福岡だけでなく、九州各地の取材を依頼してくれたおかげで、「九州」というもの差しで考えたり、経験したりするチャンスにも恵まれた。これが関東や関西に住んでいたとして、同じような経験ができたかといえば、答えはきっと“ノー”だろう。

教授でも学者でも編集長でもない、一ライターが書いた本と聞けば、心許ないと思われる方もいるだろう。もっともなご意見だ。それを承知の上で本書を執筆している理由は、個人として、ライターとして、誰にも負けないぐらい九州を回り、九州の魅力に触れ、心底、この地に生まれてよかったと感じているからだ。

いまだに東京の同業者からは「地方ライター」のレッテルを貼られ、蔑んだ目で見られることもあるが、そんなことはどうでもいいことだと思える余裕ができた。それも、九州が他にも負けない素晴らしい所だと、自信を持って言えるようになったからかもしれない。

インターネットやICT機器の普及・機能の向上が、働き方をより自由にしてくれたのも大きい。また、東京の一極集中を是正しようという地方創生の波が、追い風となっているのも事実である。最近、特定の地域にスポットをあてた本が続々と発行されている理由も、人々が中央だけでなく内側や足元に目を向けるようになってきたせいだろう。

本書は『九州びいき』の名の通り、九州を思う存分ひいきした本である。

ジャンルを固定せず、あらゆる仕事に従事してきた私らしく、さまざまな視点から九州のいいところを見つめ直した。

私が九州に生まれたことを誇りに思っているように、九州の人たちが九州で生まれたこと、育ったことに誇りを持つきっかけになってくれたら嬉しいと思いながら筆を進めた。そして、九州と縁遠かった人にとって、本書が九州に触れる足がかりになってくれたらこの上ない喜びである。

書名
九州びいき
分類
発売日
2016/12/16
著者
田端慶子
定価
本体 780 円+税
仕様
本文224頁、並製、B6判変形
ISBN
978-4-19-864308-9
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